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Panasonic G8 の動画録音:ライン入力は高音質

2017年 04月 13日
価格.Comのカメラ板を覗いていると、G8の動画の音質が悪いと言う意見があります。 GH5は当然ですが、G8でも動画撮影に重きを置くユーザーは少なくなく、動画と一緒に録音される音質も大事な要素になってます。

しかしG8発売当初は、ボディ内手ブレ補正の動作音が従来の機種になく目立ち、これは早々にファームアップで改善されています。 この当初の悪印象が思い込みとなった意見が見られます。 しかし録音のバックグラウンドノイズは、実際に悪いとすれば何を改善すべきなのか、ちゃんと調べないと改善は無理です。

余談ながら、この種のノイズを「ホワイトノイズ」と言う風潮があり、違和感を覚えます。 ホワイトノイズはノイズの種類を示す言葉で、バックグラウンドノイズは必ずしもホワイトノイズではないので。「動物園は色んな動物の写真を撮った」と普通に言えば良いのに「色んな哺乳類の写真を撮った」と言っている様に聞こえます。



今回はライン録音のテストをした事で、G8の録音時のノイズや音質の問題が少し見えて来ました。 以下は録音結果を纏めた動画です。


これは「G3 内蔵マイクによる録音」「G8 内蔵マイクによる録音」「G8 ライン録音(アッテネーター経由)」の3種類の録音を比較しています。 各動画撮影の条件は、

◎手ブレ補正の無いレンズ使用、全ての手ブレ補正OFF、AF動作OFF、の設定。 ステレオの20cmクラスのスピーカーから1m程度の距離に三脚固定。 PCからテスト音源を再生して内蔵マイクのテストをしています。
◎室内の蛍光燈、空調、冷蔵庫、などを停止して、外部雑音を極力抑えた動画撮影。
◎マイク録音の感度設定は、G3 レベル3(レベル1~4)G8 0dB(-12dB~+6dB)に設定。(この設定で、若干G3が感度が低い)
◎CDの送出し音量はMaxで、スピーカー音量をG8の録音メーターで「ピークが赤マークの手前に納まる」音量にアンプ側で設定。(私が日常で聴くより少し大人しいレベルです)
◎G3 レベル3では感度が少し低くメーターはアンダー目になりましたが、問題のない範囲です。
◎G8のライン録音はアッテネーターの減衰量を既に調節していたので、G8の感度設定は 0dBのままで「ピークが赤マークの手前に納まる」状態となっています。

G3内蔵マイク、G8内蔵マイク、G8ライン録りの感度差は、テストトーンのレベルが同様になる様、録音したデータを最終的に調節して比較しています。

以下はテストの信号の流れの様子で、緑はマイク録音、青はライン録音です。

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「DA変換器」は、PCで音楽を聴くための「USBデジタルオーディオプロセッサ」というONKYO製中級品です。「減衰器」はアッテネーターのことで、これは即席でバラック配線で組んでいます。

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アッテネーターは、抵抗値はDA変換器の出力インピーダンス10KΩ、カメラ入力側は数KΩと予想し、減衰比1/250(-50dB程度)にしています。 これでCD再生のMax出力に対し、G8側は録音ゲイン 0dB 設定で、メーターが最適(赤が出る寸前)となりました。(デジタル録音は、もう少し低レベルに抑えるのが一般的かも知れません) 下図はアッテネータの回路図です。(出力機器側は実際はピンジャックで製作)

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最初の動画データで、テストトーンの後に4secずつの無音部があり、ボリュームを上げないと聞きにくいですが、録音時のバックグラウンドノイズを比較したポイントです。 各動画のこの最初の範囲を音声アプリに取り込んで調べたのが以下です。

Panasonic G8 の動画録音:ライン入力は高音質_b0174191_13143989.png

頭のテストトーンの高さが同じになる様に、各データのレベルを調整しています。 左側の「G3 Mic」と「G8 Mic」を比べると、G3の方がノイズは少し多く、昔からGシリーズはこの程度のノイズ性能だったのが判ります。 少なくともファームアップ対策後では、G8が「ボディ手ブレ補正の搭載で非常にノイジー」なのではなく、「G7ならそれが無いから良い」と言うのはおそらく勘違いで、測定してみれば判るはずです。

右側のライン録音は、明らかにノイズレベルが違います。 最初の動画を聴くと、ライン録りは音のボリュームも大きく(低音域が豊富なためでしょうか)、聴感上のダイナミックレンジはとても良好に感じます。

下図はノイズ部のレベルをこのアプリのdBメーターで調べたものです。 注意願いたいのは、先の波形観測の図から判る様に、テストトーンはいわゆる「0dB」よりかなり小さいレベルです。 下図は、バックグラウンドノイズの程度を比較するために、テストトーンが「-9dB」になるまで増幅して各録音レベルを揃えたものです。 従って表示は「相対的」で「目盛り値=SN比」でありません。(SN比はもっと良い値のはずです)

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G3とG8のマイク録音時ノイズはG8が僅か少ないが、五十歩百歩です。 これはラジカセのレベル以下で、気にしだすと気になるレベル、問題になるのは否めません。 一方ライン録りは、予想以上の結果です。 オーディオマニアには未だ足りないでしょうが、普通の動画の音としては十分です。 ノイズ特性だけでなく、音質としても音楽を普通に楽しむレベルを満たしていると思います。

マイク録音の方は、以前のテストでも当惑した低音域の大幅なカット、高域部のみが目立つ音、と言った癖が明らかです。 これは、G3もG8も同じ、音質は昔のラジカセの内蔵ECMマイクの録音と良く似ています。 ECMの高品位なマイクを用意して外部マイクとして使用した場合、この音質の癖は改善されると思われます。 ECMの高品位マイクは、高域側の感度を落として、感度の低い低音域に近付けて周波数特性を平坦化するので、一般に感度が低い様です。 このため、バックグラウンドノイズに関しては、はたして改善されるかは疑問です。 このノイズの改善には、それが良くない原因について、もう少し考察が必要と感じます。



安価なワイヤレスユニット用のピンマイクがあったので、これを外部マイクとしてテストしました。

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予想はしていたのですが、この外部マイクのノイズ特性は内蔵より悪い結果でした。 G8の手ブレ補正をOFFとした場合(おそらくONでも動作が穏やかな場合)、その機構の振動はノイズと殆ど関係無いと言うことは、よりはっきりしました。 G8の内蔵マイクはノイズの特性が芳しくないとは言え、G3やこの安価なピンマイクより良いのです。 もしボディ内手ブレ補正機構がG8のノイズの主要原因なら、G3やピンマイクはもっと良い値を示すはずですから。

では、これらのマイク録音の全てで、ノイズ特性が芳しくないのは何故か?

ライン録音の好結果で判った事は、「内蔵マイク」もしくは、そのレベルをラインレベルに持ち上げる「ヘッドアンプ」の周辺がバックグラウンドノイズの殆どを発生させているという事です。

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上図は、マイク周辺の回路構成を推測した模式図で、上側は内蔵マイクと外部マイクに別個にヘッドアンプがある場合、下側はヘッドアンプが共用で、ジャックで切り替えている場合です。 たぶん私は下側の構成ではないかと思いますが、これはG8を分解しないと判りません。

赤い部分がノイズの発生し易いと考えられる場所ですが、上側で内蔵/外部でヘッドアンプの特性が著しく異なるとは考えにくく、また下側の場合は同じヘッドアンプです。 これは上下のいずれの構成でも、マイクユニット側が怪しいと考えるのが普通です。

ここで思い当たるのは、電気的に感度の高いマイクユニットに、カメラの回路のデジタルノイズが影響しているのではないかと言う事です。 PCとオーディオ回路を連携させて使用すると、PCの電源回路の影響下にある回路は、ことごとくノイズに侵されるのに気付きます。 PCからオーディオ信号の受け渡しは、上手くやれば優れた性能になりますが、下手をするとノイズまみれです。 デジタルカメラの内蔵マイクは、その意味でラジカセより厳しい環境です。

マイクユニット自体のノイズ特性ではなく、マイクユニットをデジタル回路と切り離さず使用しているので、ノイズ特性が悪いのではないかと、私は疑い始めました。 ライン録音の場合、ラインレベルの強い信号とアッテネーターが壁になって免れたという推測です。

 ①内蔵マイクユニット自体のノイズ性能が悪い
 ➁カメラのデジタルノイズがマイクユニットや周辺回路に影響している

Panaのマニュアル上の「外部マイクで上質の録音が可能」の説明通りなら、単に①が原因という事になります。
もし➁が原因なら、カメラからのパスパワーで動作する外部マイクは、ノイズ性能が改善しない場合が出て来ます。(低域の音質などは良くなり得ても)

実際に外部マイクで良い結果が出せれば、①か➁かは判って来るでしょう。 ECMマイクをカメラからのノイズに影響されない様にするには、外部にマイクのヘッドアンプを用意するのが確実と思います。 これは、後日に実際に試してみたいと思っています。



by Ataron | 2017-04-13 23:57 | 撮影機材/技術 | Trackback | Comments(1)
Commented by oshibanayoshimi at 2017-04-17 11:46
先ほどは、ご親切に、教えていただき、ありがとうございました。
こちら、後期高齢者目前の年寄りで、PCの事は、不明ですが、
エキサイトブログの、旧投稿画面から投稿すると、何の問題もありませんでしたが、新管理画面からの投稿の折、度々画面が消えますので、問い合わせてみた次第でございます。
ご親切に感謝申し上げます。     御礼まで。
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