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フォントってもともとアートなのです

2018年 03月 06日

まる文字革命


大昔、「まる文字」というのが流行って、当時は「若者文化」と言われたものです。 その時代、今から半世紀前の時代にはインターネットは無く、若者の交流は学校などに限られているのが普通で、それらはやはり学生達の間から流行って行ったものと思います。「まる文字」が拡散する力を持ったのも、交流の場があったからに違いありません。

「まる文字」の発生する以前の時代は、殆どの場面で目にする活字が「明朝」だったと思います。 看板や宣伝の領域ではゴシックが有っても、文章のタイトルや本の表紙も「明朝」か「太い明朝」という事が多く、 丸い文字を求める気持ちは人々の中に潜在的にあったのではないでしょうか。

その潜在的欲求が「まる文字」を書く若者達を増やし、ついにはアンアン・ノンノなどの流行誌の活字に、丸ゴシックを使わせる結果になった様に思えます。 印刷業界の当時の活字の問題は定かに判りませんが、これらの流行誌のヒットに、丸い活字は欠かせなかったはずです。

〔注〕この事を調べて行くと、下の記事を見つけました。 興味のある方は参照ください。




現在はネットという場があるが


今ではネットやスマホがあります。 非現実な前提があるものの、交流の場は半世紀前と比べてずいぶん広くなったといえるでしょう。 しかも、ネットには年代層や社会的な背景などの枠はもともとありません。 これは流行を生み出す場として強力に機能しているはずです。 今のTVを見ていると、昔の流行の仕掛け主が、ネット上の流行を漁って逆輸入しようとしている様に見える時があります。

若者言葉は言葉の本性、言葉は生き物の様に変わって行くもの、という事を最近は良く耳にします。 なるほどと、まるで言語学者になった様に納得するのですが、今や別に若者でなくても新しい言葉を生成しうる場所に居るわけです。「新しい言葉」は、その時代に必要とされている、ある物や意味を表すのにとても適した言葉で、それまで適した言葉が無かったら、嫌でも「新語」として流通すると思います。 もっとも、その言葉を必要とする人達が多数派でなければ、業界新用語の枠を超えた新語にはなり得ないでしょう。

一方、フォントという部分に目を向けると、「まる文字」の様な大きな流行は無い様に見えます。 これには幾つか理由が考えられます。
 ◎フォントは受動する対象で、選択は出来るが普通のユーザーが簡単に作れない。
 ◎従来、フォントは通信機器やOSの制約を強く受け、選択出来るだけも良い位とされて来た。
 ◎現在の各種のシステムは、おうよそ人々のフォントの欲求をある程度満たしている。
もう、人々の間から生まれた新しいフォントの大流行という様な事は、あり得ないのかも知れません。 セリフもサンセリフも明朝もゴシックも、なんでもあるんだから。



私が通った道


私はメイリオが好きなのですが、その背景には「まる文字」「丸ゴシック」を求めた流れがあります。「まる文字」は直接の筆記文字ですから、魅力的に思ったが私は上手く書けませんでした。 そのうちワープロというものが出来て、初期の機種は「明朝」しか扱えません。 しかし、私も丸い文字が書きたかったのですね。 ワープロで「細丸ゴシック」が使える様になった時は、もうこれしかないと思って飛び付きました。

PC時代になるとフォントが自由に選べ、「MSゴシック」がまあ合格ライン。 印刷はやはり「細丸ゴシック」を使いました。 そして高解像の時代に入り、最後に「メイリオ」が現れました。 これはモニター上でも素晴らしい。 ゴシックと明朝の良いとこ取りをしている様に感じます。

この様に振り返ると、だんだんと好みのフォントを操れる様になって来たのだなと思います。 もちろん、その背景にはデジタル技術の進歩があります。 最初は、鉛筆とペンに始まり、シャープペンやロットリング等に勤しみ、定規を当てて書いたり、ペンを裏向にして書いたり、それは文章を書くよりも、絵を描く事に近い作業。 今では、キーボードをコトコトとやってますが。



でも何か足りないと思う事が無いわけではない


少し前までブラウザ表示で使えるフォントは、PC側の制約があったのですが、ウェブフォントの発展で条件が変わって来た様です。 動画が普通に扱える時代に、表示速度はそう問題ではない様です。

以前より自作フォントを発表している人達が居る事を知って居ましたが、最近は利用方法がウェブフォント化に進んでいる様です。 下はPCにインストールできるフリー自作フォントを紹介するページです。


その気で環境を用意すれば、これらの自作フォントをウェブフォント化して、ブログ誌面で使える時代になった様です。 それにしても自作フォント、よくまぁ頑張って作ったもんだと思います。

こんな人達が昔に居たら、最初にこぞって「まる文字」を作った可能性が強いでしょう。 先に書いた様に、丸い文字の欲求は、現代の丸ゴシックフォント類によって吸収され、もはや創作対象になりにくい様に思います。 でもその内に、今まで無かった種類のフォントデザインが、強く求められる時が来るかも知れません。



フォントとアートの接点


タイポグラフィーという言葉があります。 何かは下のリンクを見れば、一目瞭然です。


文字を書く事は、幼い時は絵を書く事と余り区別されたものでは無かったはずです。 タイポグラフィーを見ていると、文字のデザインがアートの本性を表明している様です。



より優れた手書き入力装置とアプリが必要かも


私は、時々思い出した様にペンタブレットを取り出して使ってみますが、とっても使いこなせません。「高級なヤツだともっと使い易い」「最新式だってそう変わらない私が下手なだけ」と2つの考えの間を行き来します。 手書き風のフォントを作った人のブログを読むと、やはりペンタブレットを使って文字を作って行く様です。 また、アマチュアが使えるデザイン画からフォントファイルを構成するためのアプリは、希少なものだそうです。

必要な入力装置(タブレット)やアプリが、もっと敷居の低いものになれば、沢山のアマチュアフォントが生まれる時代が来るかも知れません。 潜在的に、人の中には文字を愛する要素、文字を自分の好みに表現したい欲求があると思います。 それは、音楽を聴くだけでなく、自分で奏でたり歌ったりしたいのと同じで。

とりとめ無く書きましたが、フォントについて、この頃気になった事を書き連ねたしだいです。



by Ataron | 2018-03-06 19:04 | PC環境(ハード/ソフト) | Trackback | Comments(0)
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