人気ブログランキング | 話題のタグを見る
Studio TA Subsite の案内とお知らせ

ミラーレンズの偏心絞り  

2009年 04月 26日
ミラーレンズは、カセグレン式天体望遠鏡の構造を写真撮影用に導入したもので大変特徴がある。光を鏡筒内で二度反射させるので、同焦点の望遠レンズに比べて驚くほど短い鏡筒におさまる。反射鏡を用いると原理的に色収差が生じず、望遠で必要とされる大口径で長焦点の系が比較的容易に得られる。 光学天体望遠鏡の主流が反射式なのはこのためだ。

ところが撮影対象の状況にもよるのだが、ドーナツ状のボケが金環日食の木陰の様に沢山出る場合や、強い二線ボケがめだってしまう事が時々生じる。二線ボケでは、焦点の外れたところの一本の枝が、ボケた二本の枝がある様に見える。これらの種類のボケは、写真に違和感を感じさせるとして、一般には好まれない。大変優れた要素を持つミラーレンズが、民生写真機の世界ではマイナー扱いをされる理由だ。

また、構造的に光学系の中間点で絞りを作りにくいらしく、現実に絞りを内臓した物は見当たらない。 絞りは写真技術上で大変重要なのをご存知の方は多いだろう。不要に明るい光量を抑えるだけでなく、焦点深度(被写体との距離で焦点の合う範囲)を調節する。収差を抑える効果もあり、シャープネスを高めたい場合には必要だ。超望遠の撮影では、光量は不足側になりがちだが、絞りが欲しい場合もある。 ミラーレンズの中には光量調節のために、レンズ光学系の途中にNDフィルターを挟む構造のものもあるが、光量調節以上の効果は期待出来ない。

+

ミラーレンズを扱っていて、絞りを使ったらどの程度の効果があるのだろうか。レンズの入り口に絞りを作ったタイプの製品を昔にオーストラリアのメーカーが作っていた事を知り、簡単な絞りを作って実験してみる事にした。

最初の写真は、紙などを使って試作した絞りで、ミラーレンズの前面に置くものだ。実験なので、レンズフードの底にひっかける様にして取り付けるという安易な方法だ。
ミラーレンズの偏心絞り  _b0174191_17514226.jpg
次の図の上段は、ミラーレンズ内の光の進み方を説明したもの。主ミラーの前方の小さなミラーで二度目の反射をさせた光を筒底からカメラへ導く。この小ミラーが塞ぐので、主ミラーはドーナツ状の入射光を扱う形になる。
ミラーレンズの偏心絞り  _b0174191_1754666.jpg
この図の下段は、レンズに入射する光(像を造るために利用される光)の範囲を示している。絞りA、Bの「一般的な絞り」では水色の部分の入射光となり、やはりドーナツ状となる。ファインダーを観察していると、ボケの部分の像は、入射したドーナツ状の光が「累積」して構成されているのが判る。 レンズ鏡筒の前面に下敷きなどを置き、一部しか光を通さない様に隠してみると、その一部を通って来た光はとんでもない所に像を作っているのが判る。興味のある方は、一度試してみられるとよい。

「絞り無し」に比べて「一般的な絞り」では、ボケを構成するドーナツが小さくなり、そのぶんシャープネスが増す。その状態を観察すると、二線ボケも、実はこのドーナツ像が連続して構成した結果だと判る。絞りを取り付けると、絞りの半径に比例して二線の幅が狭くなるのだ。(普通のレンズでは、このボケを構成するのが円なので、円の像の累積として普通にボケて太くなった線が出来ると考えられる)

そこで、利用する入射光を中心軸から外した絞りCを試作した。利用光量が激減すること、光軸の出来るだけ中央を使うべしという常識にも反する極端なやり方だ。しかし、結果としてこの絞りで二線ボケが解消し、像のシャープネスもコントラストも向上することが確認された。
ミラーレンズの偏心絞り  _b0174191_14183564.jpg
左側が絞り無し、右が偏心絞りのもの。シャッター速度は、左が1/4000sec、右が1/500で適当な明るさになったので、8分の1程度に絞られたことになる。 画像はピクセル等倍像を切り出して並べ、左右の差を崩さない様に共通のガンマ補正を僅かかけている。

だいたい焦点の合っている所なので、もともと明らかな二線ボケは現れていない。しかし、電線や電柱、樹葉のディテェイルがはっきりし、霞が消えた様に右側はコントラストが向上しているのが確認される。

+

実験したミラーレンズはTamron Sp500/F8で、カメラはEOS Kiss DNを使用してテストしている。

偏心絞りを使う場合は、露出計の感度が偏心の位置(絞りを回転させた時の向き)で大いに変わる。カメラボディー内の露出受光センサーの位置に関係するらしく、絞りの位置にあわせた露出補正を考慮する必要がある。

この偏心絞りは光量損失、装着性、露出が決め難いなど、問題点も多く実用的なものとはいえないだろう。しかし、ミラーレンズを使っていて、二線ボケ、シャープネスの低さ、色乗りの悪さなどをなんとかしたい特別な場合には試す価値がある。

こういう絞りについての報告はあまり見あたらないので、公開するしだいだ。
by Ataron | 2009-04-26 19:12 | 撮影機材/技術 | Trackback | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。