手元に EOS KissDN と EOS 7D が揃ったので望遠撮影上で問題になりがちな、撮影時のメカニカルショックについて、基本的なテストをしました。
1枚撮りの結果はこのページ 「 EOS 7D ショックレス撮影のテスト(1)」に掲載しました。
7Dの連続撮影(連写)時の結果は「
EOS 7D ショックレス撮影のテスト(2)」を参照ください。
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Kiss DN の発表された時代にはなかった、ライブビュー機能や静音撮影機能を 7D は備えている。マニアルフォーカシングの困難さから(Reflex-Nikkor 1000㎜ はF11である)、ライブビュー機能が搭載され始めた当初から注目していた。 また、静音撮影機能はミラーショックを無くし、シャッターショックを半減以下にするものとして有効に違いなく、これまた超望遠にはありがたい機能だ。
シャッターの先幕をあらかじめ開いてライブビューを行っていて、レリーズ時に、シャッターが開いた時に得られる初期情報を電子的に再現し、露光後、メカニカルシャッターを閉じて撮影終了するらしい。ライブビュー機能と静音撮影はいわば兄弟機能であり、ライブビューモードに入ってなければ静音撮影は出来ない。
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ライブビュー時の動作について、カタログ等を見てもいまひとつ不明だった点が幾つかあったので、実機で調べた結果を参考に挙げておきます。
①ライブAFモード クイック で 静音撮影 のセット時の動作
これは、シャッターボタン半押しでミラーが一旦降りるクイック動作でフォーカス合焦後、レリーズ待機となり、押し込むと静穏撮影が実行される。オートフォーカスの効かない超望遠では無意味なセット。オートフォーカスの効く望遠レンズやマクロレンズを使用する場合、迷いがちなライブAFモードのライブモードが使いたくない場合に有効。 レリーズまで一呼吸置けば良いだろう。
②静音撮影で連写した場合の動作
ライブビュー画面はOFFとなったまま静音撮影の連写動作が行われる。連写を止めるとライブビューに戻る。ミラー動作は無くアップしたまま。シャッター幕は後幕のみ動作していると想像されるが、この連写時のシャッターのメカニカル振動については別の所でテストしたい。
③ライブビューモードで静音撮影なしの設定
静音撮影の後幕の音の前に、先幕を引いてセットするらしい音が入り、その直後にシャッターが落ちる。その間、ミラーアップは継続し、撮影後にライブビューに戻る。
③ミラーアップ撮影(カステムFN)を設定した場合
一回目のレリーズ(最底までの押し込み)でミラーがアップ。二度目のレリーズでシャッターが落ちる。これは従来の踏襲で、ミラーアップ撮影を設定すると連写はできない。静音撮影のセットがあっても、通常の幕走行をしていると思われるが、ミラーが直後にアップする音と、元々シャッター音が小さい方なので確かに判定はできない。
また、ライブモードに入れるとミラーアップ撮影の設定は無視され、連写が可能になる。
④ライブビューの拡大機能は、一回の撮影で拡大無しの状態にリセットされる。少し不便な場合があると思われる。拡大位置は保持されるのだが。
ライブビュー画像は暗部ノイズは良く抑えられているが、5×、10×の倍率とともに激しくなる。こういったノイズの性質は実写と同様なのだと思う。
5×以上で夜間の街灯等を観察すると、ライブビュー画像上にゆっくり昇って行くぼけた雲の様な帯が乗る。高コントラストの映像による一種のノイズと思われ、普通の被写体の条件では判らないもの。
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テストは超望遠撮影を前提としており、マニュアルフォーカス撮影。速いシャッタースピードではメカニカル振動が判らなくなるので、ISOを最低の100に落した。少し曇天であったため、Reflex-Nikkor 1000㎜/F11で 露光1/40sec 程となり、テストとしてはちょうど良かった様に思う。
三脚はManfrotto 740 (コンパクト化改造を施したもので興味ある方は
三脚改造を参照されたい)を使用。上段の二段のみ伸ばし、雲台 Gitzo G2180 にレンズを固定している。ファインダーや通常ライブビューでの観察では違和感なく安定した操作が出来るが、ライブビュー10×の映像は、三脚固定でも相当に揺れる。フォーカスあわせのためにレンズに触っても、像が移動して大変だ。概して弱い三脚とは思えないが、デジスコ等を扱っている人の苦労が想像される。10×でのフォーカスあわせは精度上好ましいが、慣れが必要だと思われる。フォーカス中にブレるが、レンズ上に手をむしろしっかり預け、調節して離しては確認というやり方になった。こういう困難を一つずつ克服しないと良好な超望遠撮影は望めないだろう。
撮影対象は2~30m程度離れた電柱のガイシ。 野鳥撮影を念頭にしているのでミラーアップ撮影はテストから外した。従って Kiss DN は単純な撮影しか選べない。完璧を期してセルフタイマーでレリーズさせた。7D は同様にセルフタイマーによる単純な撮影と、セルフタイマーによる静音撮影1を行った。風でレンズや三脚が吹かれても微動する様なので、窓ガラスを経て室内から撮影している。
撮影条件は、両者とも ISO 100 1/40sec マニュアル撮影。 比較のために、出力は両方とも3456×2304 Jpeg画質ファインに統一している。
最初の写真は 7D 静音撮影によるが、撮影された全体像確認のためのもので、リサイズしている。

メカニカル振動によるブレの結果は、数度の撮影の繰り返しで傾向が見えて来た。下の比較写真はクリックで拡大表示されます。

Kiss DN は若干明るい写真となる傾向だったが、そのまま比較している。全画像の中央部でフォーカスポイントはガイシから出ているコードの根元。フォーカスは、最初に 7D のライブビュー画像10×で調節し、7D静音撮影、7D通常撮影、ボディのみ取り替えてKiss DN通常撮影と行った。ボディを交換してもフォーカスの再調整が不要な事は現在までに確認している。
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予想通り、7Dの静音撮影がメカニカル振動を押さえ込んでいる事が良く判る。予想外だったのは、普通のミラー/シャッター動作では、7Dの方がブレが大きい点だ。シャッターの構造上の差がある様で、天体系でKissが活躍していると聞いた事があるが、こういう点もKissは向いている様です。
今回テストは、メカニカル振動によるブレが意図的に良く出そうな条件で行った。天体等でバルブ~秒となると、ブレている間の露光よりブレが収まってからの露光が長くなり、影響が減ずる傾向があると思われる。一般に1/30sec周辺がシャッターブレが出やすいという風説を聞いた事がある。比較的最近には、測定ツールが出て話題になっている様だ。
一眼レフが抱えるブレ問題 日経エレクトロニクス2009年5月4日号
現在の望遠撮影では、シャッター速度を稼いでブレを抑える傾向が強い。だが、静音撮影を使うと被写体ブレがなければ、シャッター速度を抑える方向に撮影可能な領域を拡げる事が出来る。こういうのが効を奏した撮影もやってみたいものだと思う。
また、後幕も電子的に行えないものかという素朴な疑問がある。露光素子の詳しい事を知らないだけと笑われそうだが、そのうち半導体技術で簡単に実現してしまいそうな気もする。